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追悼 北杜夫

北杜夫さんは、私が青年時代に愛した文学者のトップ3に必ず入る人でした。

「どくとるマンボウ」ものは航海記、昆虫記、青春記のすべてを読んだのはもちろん、一時期は大河小説の「楡家の人びと」に、どっぷりハマっていました。登場人物の一人が太平洋戦争の末期に、空母に乗り組んで荒波を渡ってゆく暗く重い描写は、そのまま心に刻まれています。肉親の斎藤茂吉夫妻らをモデルにした脳病院の家族三代が大正・昭和の激動期を生き抜く物語は、今も決して忘れられません。

また、「幽霊」や「木精(こだま)」などの叙情的で繊細で美しい小説も大好きでした。最近は滅多に小説も読みませんのではっきりは言えないのですが、今の時代にはもう北さんの文章のような作品に出会うことはないだろうと考えています。

北さんは東北大学の医学部で学んでおり、学部は違うけれどいわば先輩。「どくとるマンボウ青春記」にはまだ戦争の傷跡が残り、荒涼とした故郷仙台の様子もリアルに書きのこされています。そんなところからも、他の小説家とは異なる近しさを感じていたのだと思います。

心から、北杜夫さんのご冥福を祈ります。

   一本の芒のぽきと折れたる日     大波

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