« 2011年1月31日 | トップページ | 2011年2月2日 »

河野裕子歌集「葦舟」

去年8月に乳がんのため64歳で亡くなられた歌人の河野裕子さん。短歌は門外漢ですけれども、率直に病中の歌を詠む河野さんはかなり好きでした。006


その河野さんの生前最後の歌集だという「葦舟」、どの頁を開いても病気と闘いながら詠み続けてきた一首一首に心が打たれます。2005年から5年間の病中歌、夫君の永田和宏さんと二人のお子さんの家族(全員歌人です)との絆も詠われています。「歌が無ければ、たぶん私は病気に負けてしまっただろう」という後書の言葉、亡妻のことを思い出して深く共感しました。007


それにしても、同じ短詩型文学ながら俳句には決して無い短歌というもののなまなましいドキュメント性に圧倒されます。「歌人として死にゆくよりもこの子らの母親であり君の妻として死ぬ」…こんなふうに真っ直ぐに心をさらけだすことは俳句には到底できませんね。歌を読みながら、ああ、やっぱり私は俳人の枠から逃げられないなあ、としみじみ思いました。だって、いろいろな歌の中から、結局「黄の蝶が真冬の日向に翅閉ぢて蝶の時間の中に睡れる」のような歌に惹かれる自分を見つけてしまいますからね。よい歌の数々を残されて逝った河野裕子さんを、心から悼みます。


ろう梅のいよよ明るく冬深し        大波

| | コメント (1)

« 2011年1月31日 | トップページ | 2011年2月2日 »