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そうか、もう君はいないのか

八年前に妻に先立たれて以来、同じようにガンなどで伴侶を亡くした人の手記やエッセイ、それを素材にした映画やテレビドラマなどは、一切見ないようにしてきました。はっきり理由は言えませんが、一言で言ってしまえば、その類のものを見るのは「からだに悪い」と思ったからのようです。例外は、江藤淳「妻と私」、川本三郎「いまも、君を想う」。004


去年放映された「そうか、もう君はいないのか」というテレビドラマが、経済小説の草分けである城山三郎さんの手記を原作にしたものであることは知っていましたが、観てしまうと相当に「からだに悪」そうな予感がしたので、結局観ずじまいでした。Img_0802


ところが、このお盆の期間中、その原作が新刊の文庫として店頭に並んでいるのを何気なく買い、自宅で一気に読んでしまったのでした。もともと私は、直木賞受賞作の「総会屋錦城」以来の城山三郎ファン。その淡々とした筆致の文章、剛直とも言えるまっすぐな表現に、やはり深く魅了されてしまったのです。同じ境遇の人の手記を読んで感動したというのではなく、城山さんという作家の類稀なる率直さ、しかも十分に抑制の利いた愛情表現に強く打たれたと言ってもいいでしょう。Img_0807


末尾に付された次女井上紀子さんの追悼の文も心のこもったもので、これを読んで私は涙をこぼしてしまいました。かといって、テレビドラマ化されたものをDVDなどで観たいという気は、やっぱり起きてきませんでした。主演の田村正和さんや冨司純子さんには申し訳ないけれども、この世界を映像化したら、どうしても「からだに悪い」と思わざるを得なかったからです。


百合一本手向けて汝の魂送り       大波

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