« 2009年6月2日 | トップページ | 2009年6月4日 »

成瀬映画の思い出

成瀬巳喜男監督の映画の中で、私が最も印象深く記憶しているのは、実は「浮雲」や「山の音」、「あにいもうと」などのいかにも成瀬らしい名作群ではなくて、「コタンの口笛」という成瀬としては異色の社会派的な作品でした。この映画は北海道の先住民族アイヌへの差別問題を中心に据えた作品で、森雅之が珍しくも一家の父親を演じていました。北海道と森雅之というと、誰もが大メロドラマ「挽歌」のヒーロー「桂木さん」を思い出す筈で、「コタン」の苦難の父親像を思い浮かべる人は殆どいないのではないでしょうか。なぜこの映画が印象深かったかというと、この映画のヒロインを演じた幸田良子さんが、実は私の亡妻の親友の一人だったからで、たしかに大きな黒い瞳がキラキラ輝く先住民族らしい美貌の持ち主でした。映画は、彼女と久保賢の弟が窃盗の疑いをかけられたり、イジメにあったりと、被差別映画の定石的な展開に終始して、成瀬映画らしい味は薄いものの、実に誠実な映画の創りかたをしていたと思います。今でも好きな一本です。幸田良子さんの映画出演はたぶんこの「コタンの口笛」ぐらいの筈で、以後スクリーンで見かけたことはありません。

  風はみな六月の木にたはむれて         大波

| | コメント (0)

« 2009年6月2日 | トップページ | 2009年6月4日 »