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さよなら、愛しい人

これは村上春樹訳のレイモンド・チャンドラーものの第2弾の題名です。原題は「Farewell, My Lovely」、旧訳の清水俊二版では「さらば愛しき女よ」がタイトルでした。まだ冒頭の一章しか読んでいないのですが、相変わらず村上春樹訳はなめらかで、分かりやすくてイキがよく、21世紀版にふさわしい新鮮な印象でした。でも、私は、やっぱり「さらば愛しき女よ」の題名のほうが好きですねえ。この小説は映画化されていて、主役のフィリップ・マーロウ役はいつも眠そうなロバート・ミッチャムが演じていましたが、映画の題名も「さらば愛しき女よ」でした。この題のほうが、あの悲劇のヒロインを演じたシャーロット・ランプリングのスリムで美しい姿が、まざまざと浮かび上がってくるような気がするんです。春樹版のように「愛しい人」とすると、なんだか映画「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくる妖怪ゴラムが吹き替え版でしばしば口にする「わたしのいとしいしと」という声を思い出してしまって、なんだか気色悪いのですけれど…(笑)。春樹さんはあとがきで、次のフィリップ・マーロウものの翻訳は「リトル・シスター」にしたいと言っておられますが、これも旧題の「可愛い女」にしてはいただけないものでしょうか?

  それ以上近づかぬ猫春遅々と       大波

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