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奈落の底から

「折々のうた」に取り上げられた「奈落より灯の洩るる秋狂言」という句は、実は私の青春時代の思い出がこめられた句なんです。半世紀ほど前の学生時代、私は大学の演劇部に所属していた関係で、仙台の芝居小屋のいわゆる裏方さんのバイトをしていたんですね。古い古い木造の劇場でした。何しろ回り舞台は、ローマ時代のガリー船の奴隷みたいに、私たちバイト学生が奈落の底の木材を「せーーのっ」と腕で押して回すんですからね。今ならばボタンひとつのモーターで舞台がくるりと回るのでしょうが…。歌舞伎の「先代萩」で悪玉の忍術使い仁木弾正が、花道の通称スッポンという部分から煙と共にどろどろどろとせり上がってくる場面がありますが、あれも私たちが肩の上の板に弾正を乗せて、どろどろどろと持ち上げたのです。何しろ古い木造の小屋ですから、花道の板の間から裸電球の光がほそく洩れて見えたりしたんです。今となっては懐かしい景で、この句には自分でも愛着がありましたから、取り上げられてとても嬉しかったのです。以上、自句自解は苦手な私ですが、この句に限ってちょっと思い出を語ってみたくなりましたので…。

  非常口を逃ぐる姿も秋灯      大波

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